海野佳子Unno Yoshiko

NPO法人オーシャンファミリー海洋自然体験センター

北海道出身。夫の海野義明さんとともにオーシャンファミリーの中心として活躍中。

子どもたちやファミリーへの海洋体験活動や、環境保全(ビーチクリーン、森林整備)などを行う。

Unno Yoshiko

Deeper HeroとしてDeeperの魅力を発信していただいている方々を紹介するIntroducing Deeper Heroシリーズ。みなさん釣りが好きなのはもちろんのこと、それぞれのライフスタイルは多種多様。さまざまな生き方をDeeperを通じてご紹介できればと思います。

第2回目は神奈川県葉山町で「海は面白くて楽しい」「海はすばらしい」そして「海は大切だ」を合言葉に、次代を担う子どもたちを中心に海の環境教育に関する事業を行い、地球環境の保全と、持続可能な社会作りを目的に活動されているNPO法人オーシャンファミリー海洋自然体験センター(以後、オーシャンファミリー)の海野佳子(うんの よしこ)さんです。 

Q.オーシャンファミリーは子どもたちへの自然体験活動(三宅島サマースクール、シーカヤック・SUP教室、子ども達の放課後教室など)から環境保全、森林整備、畑の活動まで、幅広く活動されているんですね。いつ頃始まった活動なのですか?

海野
 私たち家族が三宅島に移住した時からなので1993年ころでしょうか。夫の海野(義明)は大学時代は野生動物の調査研究(この当時は海ではなく山がフィールド)していて、その後11年間日本動植物専門学校で教えていました。沖縄から北海道まであちこちに足を運ぶ中で「終の棲家」として選んだのが祖母の縁があった三宅島だったんですね。出身地である葉山でずっと海には触れていて、ボードやカヤックを漕がせれば右に出るものがいないほどの海の男でしたが、(※注:義明さんはカヤックで南伊豆から三宅島まで渡ったことがある)、海のことを突きつめると最後は漁師にならなくてはいけない、海の一番の知恵者は漁師と考えたようで東京都三宅島に移住しました。当初は住民の方にだいぶ怪しまれていたよそ者だったようで、パートで働いたり娘を保育園に預けたりと地元になじむためにいろいろしました(笑)。

 そのころ、三宅島では故ジャック・モイヤー博士が、この方も三宅島の自然に魅せられて40年くらい魚類研究をしていました。クマノミの性転換を発見した世界的に著名な海洋生物学者ですね。

 三宅島で出会った私たちは、「海は面白くて楽しい」「海はすばらしい」そして「海は大切だ」を合言葉に、次代を担う子どもたちを中心に海の環境教育に関する事業を始めました。全国から魚類のことを学ぶ子ども達が集まるサマースクールや地元の小学校と連携して子どもたちに海のことをもっと知ってもらおうと思ったんですね。
 ところが、2000年に大噴火が起こりまして全島避難となりました。5年以上は帰れないだろうということで、葉山に拠点を設立して2003年に現在行っているような地元の子ども達への自然体験事業をスタートしました。現在は葉山と三宅島に拠点を持って活動しています。

Fish

Q.最近はどのような活動に力を注いていますか?

海野
活動の内容は以前とあまり変わらず、観察を通じて海のことを知ることと、身体を動かして海を体験するということを目的に活動していますが、やはり最近の子どもたちは自然体験をしなくなってきていると思います。スーパーで売っている魚の切り身がそのまま海のなかを泳いでいると思っている子がいるという冗談みたいな話もありますが、実際、魚をさわれなかったり、最初は海に入れないような子も増えています。そのような子たちを見ていて、幼少期の体験が大事だと考えてたので、これまで受け入れていなかった未就学児のプログラムを始めました。また、親の世代も自然についてもっと知るべきだと考えて、ファミリープログラムも行っています。最近は「うちの子変わるかな?」というような感じでお子さんを活動に預ける親御さんも多いですが、ちょっと他力本願かなと思ったりもします。子どもが一番長い時間を過ごすのは家庭なので、親御さんがちゃんと子どもと向き合わないといけないと思いますね。お子さんが自然の体験をして帰って、家でそのことを話しても親がわからないようではもったいないですから、一緒に体験しましょうというのがファミリープログラムです。私たちは次世代を担う子どもたちを育てたいんです。マリンスポーツ体験ができるショップはたくさんあるので大人はそちらにお任せして(笑)、私たちは子ども向けの活動をメインにしています。

kids near the sea

Q.先日、釣りのプログラムも開催されたそうですね?

海野

 はい、私たちは、以前は環境へのローインパクトということで、魚は観察(観て察する)するだけだったんです。ところが、いま述べたように、子どもたちの「生きる」「食べる」という体験が足りないと感じたので、食育という観点も含めて「釣り」のプログラムを子ども向け、ファミリー向けで行いました。釣りは近くで取った竹ざおに糸と浮きと針という原始的なもので、エサも現地にいるホンヤドカリを使います。かわいいヤドカリを石で潰して針につけるときなんて悲鳴が上がったりもします(笑)。でも、これも食物連鎖なんですね。自然の中ではあたりまえのことなんです。こんな原始的な釣りでも小さめのクロダイ、コトヒキ、コチ、カサゴなんかが釣れてみんなで食べました。捌くときも、絞めて動かなくなる瞬間などみんなドキドキしてましたよ。おなかから別の魚の頭が出てきたりして、みんなも自然のサイクルの中にいるんだよと話したりします。みんなで真剣に「命をいただくってどういうことかな?」って考えてから、いただきます。

 人間ももちろん生物ですから、自然の中の一員です。しかし、最近の都市型のライフスタイルでは自然を感じる機会が少なくなって、どうしても人間本位になっていると思います。海の広大さ、豊かさ、怖さ、生物の多様さ、賢さを学ぶことによって、自然界における人間の小ささや自分達の立ち位置を再確認できると思います。人間が一番だと思っている人も海に入れば、自分のちっぽけさ、無力さを感じると思います。また、それが人々をサーフィンやカヤック、シュノーケリングに向かわせる魅力になっているんだとも感じます。

 このように、プログラムの内容が「暮らしとは何か」という方向に向かってきています。その一環で畑作業をしたり、森林整備をしたりします。ひと昔まえは、自然体験が日常の一部分でした。自分で食べる野菜は自分で育て、自分で食べる魚は自分で釣る。全部自分でやらなければなりませんでした。いまの時代は便利になりましたが、自分でやることが減ったせいで人間の「生きる力」も衰えてきている気がします。私たちはこういう生きる根本というか、昔はあたりまえだったことに再び注目し、子どもが自然に自由に遊ぶ中で、豊かに生きる力を養っていけたらいいと考えています。海は「生命」に満ちています。生きるということを学ぶには最適の場所なのです。

kids near the sea

Q.最近の海洋環境問題についてはどう考えていますか?

海野

海に流されるごみ・プラスチックの問題、海洋汚染はずっと気になっています。海の中が見えないので、モノを捨ててしまう人が多いと言われています。私たちも定期的にビーチクリーン活動などを行っています。皆さんが環境について考えるきっかけになればいいと思っています。また、漁業資源の乱獲の問題もありますね。魚を獲りつくすというのは「ほかの人、ほかの生き物はどうなっていい」という自己本位の考え方で、結局は自分の首を絞めることになります。私たちは春に山野草のプログラムもやっていて、タンポポを食べたりするのですが(笑)、必ず「採りつくさないように」と言っています。アイヌの方々の伝統では、自然のものを取るときは、3分の1は神様のもの、3分の1は生き物たちの生存のためもの、3分の1は自分達のためのものと言って採取するそうです。とても大事な考えだと思います。お互いが配慮できれば人間社会ももっと生きやすくなりますよね(笑)

kids near the sea

Q.さて、本題ですが(笑)、Deeperを使ってみていかがですか?
海野

この間の釣りのプログラムでも使いましたが、子どもたちは興味津々でした。手のひらサイズのコンパクトな魚群探知機って本当に画期的だと思います。先ほども言いましたが、基本的に海の中って見えないんです。私たちは、魚の生態からある程度はいる場所を推測できますが、実際は潜ってみないと確かめられなかったのです。それが、Deeperを使えば簡単にわかるので便利です。子どもたちにとってはゲーム感覚で楽しいんでしょうね。また、シュノーケルやカヤックなど活動をする場所の地形を把握するというのはリスク管理の面で非常に重要です。地形図を作れば活動計画も作りやすくなるので、今後もどんどん活用していきたいと思います。

Q.本日は貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。

オーシャンファミリーの活動内容などは以下のウェブサイトからご覧いただけます。海の魅力、大切さがとても伝わってくるお話でした。これからもぜひ海好きの子どもたちをたくさん増やしていってほしいです。

 

Deeper Heroの魅力を発信していくIntroducing Deeper Hero。次回の更新にご期待ください。

(聞き手・編集 水村賢治 文章は再構成済み